啓太とサンタの物語⑤ ~サンタクロースに教わった大切なこと~

前回の続きです!

 

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「幸せについて話していこう。まず、君はお金持ちになったら成功者になれ幸せになれ

 るだろうと言ったね。確かにお金は生きていくために必要なものだ。でもね、それを

 生きる目的にして、自分の幸せの形を見失ってしまう人も大勢いる」

「お金で幸せを見失う?」

「そう。そもそも、なぜ地球にこんなに沢山の人間が存在するんだろうね。お金持ちに

 なること、安定した給料を稼ぎ家庭をもつこと、老後不安のない生活をすること、人

 から賞賛されることや認められること、こういういくつかの目的の為に人間が生きて

 いるとするならば、こんなに沢山の人間がいる必要ないと思わない?」

「まあ、でもみんなそれで幸せになるだからそれでいいんじゃないですか?それに、そ

 んな答えがでないようなこと考える意味なんかないと俺は思います」

「うん。確かに答えはでないかもね。でも、ここで大切なのは、僕がこの疑問をもった

 ということなんだ。その疑問を“分からない”と考えない選択をするんじゃなくて、探

 し続けて自分なりの答えを見つけようとするプロセスに意味があるんだ。啓太君、頭

 の片隅にでもいいから置いておいて。こういうことが、自分と向き合う事にも自分の

 幸せにも影響してくるんだ。“疑問に思わなくなること” "考えなくなること” こうい

 う生き方を選択する習慣がつくと、“自分はどう生きれば幸せになれるのか”という疑

 問にすら、“分からないから考えない”という選択をするようになる」

「“どう生きれば”とはどういう意味ですか?お金持ちになったら、結婚したらというの

 とは違うのでしょうか?」

「お金もちになりたければなればいいし、結婚したければすればいい。でも、それらが

 必ずしも幸せとイコールではないということだよ。自分の事を知ろうとしない人は、

 自分がどうしたいかすら見失う。だから親や教師や友人、テレビなんかの“人生とはこ

 ういうものだ” “これが幸せの形だ” “あの学校に入れば、あの会社に入れば” なん

 ていう周りの情報に疑問も持たず、自分の幸せに重ねてしまう。そうすると、“それら

 を得なければ幸せになれない”と無意識に思い込むようになり、それに沿った生き方に

 自分を合わせようとするようになるんだ。結果、それらを得れないこと、失うことが

 人生すべての失敗のように錯覚する。確かに、子どもの頃に周囲にいた大人達の価値

 観は、私達の価値観や信念に大きく影響している。誰だってそうだ。でも、その信念

 をもって生きることで、自分が幸せになれるとは限らない。幸せになるために一番注

 意して観察すべきは周囲の価値観、成功者や力を持った人の話ではなく自分だよ」

「自分?」

「そう。人間は自分が信じるもの、つまり信念の中であらゆる選択をして行動してい

 る。つまり、今の人生は自分が信じているもので創られているということだ。だか

 ら、自分の人生が素晴らしいものだと思えない人は、自分を幸せにしない信念ととも

 に生きていることになる。普段僕たちが考えていることや感じている感情は、自分が

 幸せになるための大切な情報だ。誰からの情報よりも一番大切にするといい。例え

 ば、君はお金持ちになったら成功者で幸せになれると思っているみたいだけど、も

 し、お金をもっていても皆のことを信頼することもできず、お金の為ならどんな手段

 も選ばないような人になりたいと思う?」

「いえ・・・俺がなりたいお金もちはそういうのではないです」

「つまりね、君はお金持ちと言ったが、僕は君が本当に望んでいるのはそこじゃないと

 思うんだ。本当になりたいものとお金持ちをイコールにしてしまっているじゃないか

 な?」

「え・・・・俺には分かりません」

「君には、サンタ達がとてもイキイキ幸せそうに生きているように見えた。そして豊か

 な生活をしていと聞いた。だから、お金持ちだからそういう生き方ができると思っ

 た。もしかしたら、今までみた成功者も、勿論お金を持っていて自信や楽しさが満ち

 あふれ輝いているように君には見えたのかもしれない。それはそうだよね。仕事が上

 手くいくということは、それだけ人が必要としているという結果だし、皆が求めてい

 るものを与えることができるんだ。そういう人たちが、自信をもって楽しそうに輝い

 て見えるてるのは当たり前の話だ」

そこまで聞いて、啓太は、サンタクロースが言いたい事がはっきりと分かりました。

「あぁ、そうです。分かりました。俺が求めていたのは、自信をもって楽しく仕事をす

 ることだったんですね。イキイキ楽しそうに働いている姿が幸せそうに見えた」

「そう。つまり、何になるか、何を持つかよりも重要なのは生き方なんだよ。自分や周

 りの人に愛をもち、何に執着することなく、自分が持っているものを使い、自分がし

 たい生き方を貫く。そういう人は、どんな状況でも自分を信じて幸せを選ぶ生き方が

 できる。それにとても魅力的だ。君も自分が何がしたいのか探したらいい。なに、失

 敗したっていいんだ。そこでの気づきが人を成長させる。君が失敗を恐れず、何度で

 もチャレンジできる人間が魅力的だと思うのであれば、何度でもチャレンジすればい

 い。それが君の魅力になる」

「俺、一から何が好きなのか、何をしたいのか探してみます。そして俺がみんなのよう

 に自信をもって楽しく働くことができるようになったら、またここに呼んでもらえま

 すか?」

サンタクロースはにっこり笑って言いました。

「もちろんだよ。もし、この先、自分がしたい生き方から目を背けたくなったときも、

 そんな自分を受け止めて勇気づけてあげなさい。“大丈夫”ってね。深刻になる必要な

 んかない。人生何とかなるもんだよ。自分が使う言葉を大切にして、自分が出来る行

 動をしていけば、必ず道は開けるようになってるから」

啓太は大きく頷いて、一番気になっていることをサンタクロースに尋ねました。

「はい!・・・・・で、バイト料は?」

するとサンタクロースはいたずらっ子のような表情でこう言ったのでした。

「啓太君ごめん。ここは夢の国だからお金ない」

                              おしまい