保育 コミュニケーションでの勝負は勝っても負け
あなたは子どもから何か言われて腹が立った経験はあるだろうか?
私はあまり子どもと関わる人生を選んでこなかったが、保育園で働いてみると、
たまに“どうやらこの子は私に対してムカいるようだ”というような挑発的な態度
をとられることがある。
もし、私が子どものその態度にイラッとして、反射的に怖い顔をしたり、口調が荒く
なったり、お仕置きをほのめかすようなことを言ったり、この子はこういう子だという
ダメな子レッテルを貼ったとするならば、その子と私の間に信頼関係が築かれることは
ないだろう。
そう思い冷静に真摯に対応しようと心がけているが、これがなかなか難しい。
ついトゲのある物言いになったりすることもある。
これは、私が園児たちの態度に“バカにされた”“私のことを見下している”などの意味づけ
(無意識での自分なりの解釈)をして、“皆のためにこっちも頑張っているのに💢”と勝
手に傷ついてトゲのある言い方をするという態度をとったという一連の流れである。
つまり、相手の反応に自分がどういう意味づけをするかで感じる感情もその次に起こす
行動も変わってくる。
ちなみに、「あなたのために」という名目で感情的に怒っている人もいると思うが、決
してそれは相手のためではない。
相手が自分の望む行動をとるようコントロールしたり、自分を正当化するために、相手
を威圧するような態度をとったり、お仕置きをほのめかしたり、相手に「こういう子
(人)」というレッテルを貼ったりするのだ。
つまり、自分のためである。
「ああいう風に厳しくされたから今の自分がある」と自分に言い聞かせている人は、そ
の当時されて嫌だった態度を、今度は自分が他者にしている可能性があると思う。
それにしても、人のために何かをやっていると考えると、どうしても相手の態度によっ
てムクムクと嫌な気持ちが沸いてきてしまうものだ。
そして、相手を言い負かそうが、相手の行動をコントロールしようが良い気持ちにはな
らないもので、結局負けたも同然である。
そこで、私は相手のためという考え方を手放すことを意識するようにしている。
例えば、午睡時に寝かせつけのためポンポンしていると「先生いや!あっちいって。
〇〇先生の方がよかった」などと悲しいことを笑いながら言われたとしてもイラつく必
要はない。その子が他の先生を希望しているだけなのだから、「〇〇先生がいいんだ
ね。先生にポンポンしてって言ってきてごらん。そう言われたらきっと先生も喜ぶよ」
と私の場合言ってみたのだが、伝えるコツは本心で伝えることだ。
勿論「向こうがいいなら自分で言え!私は頼んでやらないぞ」と意地悪な気持ちで言っ
たのではなく、自分で望むものを自分で行動して得ることが自信をつけるための大切な
プロセスになると思ったから自分で依頼することを勧めた。
結局その時は、その園児は私の腕を引っ張って「ポンポンして」と私に依頼してきたの
だが、結果はどうでもいい。
自分が何の為にそれをしているかさえ意図してればいいと私は思う。
だから例えば、子どもが「先生くさ~い。何でそんなにくさいの~」などと言ってき
た時も言い負かす必要はない。
「くさい思いをさせてごめんね。誰も言ってくれなかったからあなたが言ってく
れて助かったよ」
と笑顔で本心から伝えればいい。
(その子どもにとっては本当にくさかったのかもしれない)
もしくは、「私はあなたからそれを言われて悲しいんだけど、私も何かあなたを嫌な気
持ちにさせることをしちゃったかな?」と聞いてみればいい。
案外、大人にとっての「そんなこと」は子どもにとって重大なことだったりする。
そういう気持ちで向き合うと、子どもはそれ以上傷つくようなことは言ってこないもの
で、子どもを自分と対等な人間という気持ちで関わるのはとても大切なことだ。